新型コロナウイルス陽性者が増加しており、重傷者も増えてきました。
ワクチン接種も進んでおり、今の所ワクチン接種者の重症化は防げているようですね。
ですが、感染者は増加傾向にあり、早々に手を打たないと病床の逼迫等大変なことになりそうです。
そこで噂に聞くのが宿泊療養や自宅療養となり隔離された軽症、もしくは無症状の方々には医療処置がされていないということです。
厚生労働省の新型コロナウイルスマニュアルには適用外使用となりますが、薬物療法の案内・説明をするようにということが書いてありました。
ご存じない方が多いようですので、まとめてみます。
新型コロナ感染症に薬物療法も!?
厚生労働省で発行している資料に【新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引】があります。
この資料の後半に薬物療法という項目があり、現在の時点で効果が見込める薬が記載されています。PDFファイルで誰でもダウンロードすることが出来ますよ。
下からダウンロードして見てください。
この資料の46ページからが【薬物療法】の項目になります。
その中で最初に記載があるのが、一時期新型コロナに効果的だと主張されていた「ヒドロキシクロロキン」が臨床試験の結果、有効性が認められなかったということです。
国内外で使用されたヒドロキシクロロキンとロピナビル・リトナビル,およびカモスタッ
トは,臨床試験によって有効性が認められず,投与すべきでない.また,特殊免疫(高度免疫)グロブリン製剤については,日本の医療機関も参加した国際多施設共同研究において,主要評価項目を達成せずと報告された.
新型コロナに感染してしまったら打つ手が無いのか?と言いますと他に効果的な薬があることが上記マニュアルに記載されています。
ただし、特効薬的な、投与すれば必ず回復するというものではなく、重症化する前ならば回復する人もそれなりにいるというほどの効果です。
ただ、その様な薬があることを知らないよりは、知っていれば万が一のときの判断材料になるかと思いますのでご紹介していきます。
新型コロナウイルスに効果がある薬は?
現状まだ研究段階ですので、これだ!という薬はわかりません。
ですが、新型コロナ感染症患者に投与してそれなりに効果が認められる薬がいくつか出てきています。
できることなら軽症から中等度症の初期に投与することができればかなりの回復率を見込めるようですが、如何せん薬の供給量が少なく、国で買い上げて分配する様な状況です。
ですが、新型コロナ感染症の治療法を確立しようと研究は進んでおり、その結果が出つつありますので希望の光が見えてきています。
日本国内で承認されている医薬品
まずは国内で正式に新型コロナ感染症の治療薬として承認されている医薬品です。
残念ながら一般販売はされないので、病院での治療で使用されるものです。
これらが専門病院への入院以外でも使用できるようになるとより助かる人が多くなると思うのですが・・・・
レムデシビル
RNA 合成酵素阻害薬:2020 年 5 月 7 日に特例承認,2021 年1月7日より適応拡大
重症になってからでは難しいようですが、そこに至る前に投与されれば回復する見込みが上がるとの臨床試験があります。
レムデシビルはすでに人工呼吸や高流量の酸素投与に至った重症例では効果が期待できない可能性が高いが,サブグループ解析の結果からは,そこまでに至らない酸素需要のある症例では有効性が見込まれる.
投与期間に関しては,挿管例を除く低酸素血症のある COVID-19 肺炎患者では 5 日間治療
群と 10 日間治療群とでは有効性・副作用に差がなかったこと,および前述の軽症肺炎を対象
として 3 群での RCT3 では 10 日間投与群と標準治療群は有意差がみられなかったことから,
原則として 5 日間の投与が推奨されるが,個別の患者の背景に応じた判断を行う.
また,国内において承認条件に基づき臨床試験成績が提出され,中等症患者に対しても効果
が認められると判断されたことから,2021 年1月7日からは,必ずしも酸素投与を要しなく
ても肺炎像が認められる『本手引き』‘ 中等症Ⅰ ’ の患者にも投与可能となっている.
ただし、世界中で需要のある薬ですので供給量が少ないです。
世界的に薬剤供給量が限られているため、当面の間 、 厚生労働省においてレムデシビルを買上げて , 患者に無償提供している状態です。
デキサメタゾン
ステロイド薬
イギリスでの入院患者を対象とした大規模多施設無作為化オープンラベル試験で、標準治療を施した患者より、デキサメタゾンを投与した患者のほうが致死率が減少したことが示されました。
ただ減少しただけであり、完全回復というわけではないことは気をつけたいところです。
新型コロナウイルス感染症で重症化すると起きる肺炎の一つが「間質性肺炎」と言われています。
この間質性肺炎にはステロイドパルス療法が適用になることもあります。
ですので、ステロイド剤が新型コロナで肺炎を起こした場合に効果があるのは理にかなっているのかもしれません。
上記マニュアルには、
登録時に酸素投与を必要としたデキサメタゾン投与群の 21.5%が登録後 28 日以内に死亡したのに対し,対照群では 25.0%であった.しかし,登録時に酸素投与を要しなかった集団では予後改善効果はみられなかった。
とあります。
つまりは肺炎を起こして、人工呼吸器をつけた患者にデキサメタゾンを投与すると、投与しなかった郡よりも3.5%の方が28日以上存命だったということです。
この結果は28日以内という期限を設けています。
その後はどうなったのかは残念ながらわかりません。
明確に回復したと書いていないのが怖いですね。
バリシチニブ
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤:2021 年 4 月 23 日に追加承認
この薬はレムデシビルと併用して投与する薬です。
回復期間が短くなったということで効果があると言われています。
COVID-19 と診断された入院患者 1,033 人を対象にレムデシビル(10 日以内)に加えて,バリシチニブ(14 日以内)またはプラセボ(対照)を投与した RCT では,バリシチニブを投与された患者の回復までの期間の中央値は 7 日,対照群では 8 日であり(回復率比,1.16;95% CI,1.01 ~ 1.32;P = 0.03),15 日目の臨床状態の改善のオッズは 30%高かった(オッズ比,1.3;95% CI,1.0 ~ 1.6)。
また,部分解析集団において登録時に高流量酸素または非侵襲的人工呼吸を受けた患者の回復までの期間は,併用療法で 10 日,対照群で 18 日であった(回復率比,1.51;95% CI,1.10 ~ 2.08).デキサメタゾンとバリシチニブの優位性の検証は現在行われているところである.
レムデシビルと併用したほうが1~8日回復が早くなるということですね。
「回復」としっかり書いてあることから、患者が生還しているということでしょう。
カシリビマブ/イムデビマブ
いわゆる「抗体カクテル療法」と言われるものですね。
本剤は単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られた SARS-CoV-2 スパイク蛋白の
受容体結合ドメインに対するモノクローナル抗体であり,SARS-CoV-2 に対して抗ウイルス
作用を発揮することが期待されている中和抗体薬である.中和抗体薬は,発症から時間の経っ
ていない軽症例ではウイルス量の減少や重症化を抑制する効果が示されている.重症化リスク因子を 1 つ以上持つ COVID-19 外来患者を対象としたランダム化比較試験で
は,入院または死亡に至った被験者の割合は,カシリビマブ/イムデビマブを各 600 mg 単
回投与した群(736 例)において 1.0% であり,プラセボ群(748 例)の 3.2% と比較して,
70.4 % 有意に減少した
効果はありそうですが、ちょっと気になるところが・・・
上記の内容をまとめますと、「重症化リスク因子を 1 つ以上持つ COVID-19 外来患者」1,484名中で”入院”または”死亡”に至った割合と出ています。
外来患者ですので、つまり”死亡”というのは自宅療養や宿泊療養などで急変して入院することなく亡くなった方ということでしょうか?
またこの記述で見えてくるのが、抗体カクテル療法をしなくても96.8%の人が入院も死亡もすることなく回復されているということですよね?
以前から言われていますが、新型コロナに感染した人の内、多くの方が無症状もしくは軽症や中等症初期で回復されているということです。
上記の臨床試験では”外来患者”とあります。
つまりは何らかの症状があり、病院に治療に訪れていたということですね。
その中でもプラセボ群という抗体カクテル療法を受けなかった人も96%以上回復している事実は逆に驚きでした!
まぁ、個人の感想は置いておいて、次は適応外使用の薬のご紹介です。
日本国内で入手できる適応外使用の薬
新型コロナ感染症に対して有効性も安全性もまだ確立されていないが、臨床試験ではどうやら効果がありそうだと示されている薬です。
どちらも既存薬ということで、全く別の病気に対して使われている薬ですので、そちらの病気に対しては有効性と安全性は確立されています。
ですので安全性の面では、副作用も含めて確認されている薬です。
トシリズマブ
(遺伝子組換えヒト化抗 IL-6 受容体モノクローナル抗体 , 効能・効果 :関節リウマチ)
この薬も死亡率を約4%ほど下げたということで効果は認められるがまだまだ検証段階の薬です。
国内外で企業治験を含めた臨床試験が実施された.英国の RECOVERY 試験(ランダム化非
盲検試験)では,対象患者 4,116 人(14%に侵襲的人工呼吸管理,41%に非侵襲的人工呼吸
管理,45%に酸素投与,82%に全身性ステロイド投与)のうち,トシリズマブ群(2,022 人)
の 31%,対照群(2,094 人)の 35% が 28 日以内に死亡し,トシリズマブ群で有意に死亡率
が低かった.
28日以内(4週以内)というのが研究の一つの区切りですね。
ですのでその後の結果は書かれておりません。
28日までは存命だったがその後は・・・・ということもありえます。
ただ他の国での臨床試験では投与群と対照群での有意差は見られず、また投与後28日までの人工呼吸管理や死亡を減らすことが出来たが総死亡率(28日以降の状況含む)だと変わらなかったというデータもあるので、過度の期待はしないほうが良さそうです。
米国を中心に実施された二重盲検試験(人工呼吸未使用の入院患者 389 人が対象)においては,トシリズマブは投与後 28 日までの人工呼吸管理または死亡を減少させたが,総死亡率(人工呼吸管理後の死亡を含む)を減らさなかった.
WHO は上記の知見を踏まえて、2021 年 7 月にトシリズマブとサリルマブを酸素需要のある入院患者にステロイド薬と併用することを新たに推奨した
(死亡リスク低減効果は 1,000 例あたり 16 例と推計).
ファビピラビル
(RNA 合成酵素阻害薬 , 効能・効果 : 新型・再興型インフルエンザ)
ウイルスの増殖を邪魔する薬でしょうか。
臨床試験参加人数が89名と少ないのと、なぜかプラセボ群との比較をしていないので正直どうなのかわかりません。(当方専門家ではないですので)
もとはインフルエンザ用の薬ですが、非投与群との比較が無いと効果を判定出来ないような気がします。
「抗体カクテル療法」の項目で見ましたが、抗体カクテル療法を受けない対照群の96%が回復しているというデータが有りました。
しかもそのデータは748名というファビピラビルの約9倍の参加者でのデータです。
殆どの人が何事もなく回復するようですので、ファビピラビルの試験方法ではちょっと効果がわかりにくい気がしますがどうなんでしょうか?
藤田医科大学が中心となって無症状・軽症患者 89 名に実施された多施設無作為化オープンラベル試験では,試験参加 1 日日から内服を開始した群(通常投与群)と 6 日目から内服を開始した群(遅延投与群)で,参加 6 日目までの PCR 陰性化率が通常投与群で 66.7%,遅延投与群で 56.1%(aHR 1.42;95% CI,0.76 ~ 2.6),また発熱患者の試験参加 1 日日から解熱までの時間が通常投与群で 2.1 日,遅延投与群で 3.2 日(aHR 1.88;95% CI,0.81 ~ 4.35)と報告されており,有意差には達しなかったものの早期の PCR 陰性化,解熱傾向が見られた.
う~ん、やっぱり非投与群との比較を見ないとわかりませんし、被験者のうちで中等症まで進んだ患者はいたのかどうかが気になります。
その他の薬剤に関しては資料には簡易にしか記載がありませんので一気に書いていきます。
アドレノメデュリン
(血管拡張性ペプチド):
現在,国内において,医師主導治験が実施されている
イベルメクチン
(抗寄生虫薬,効能・効果:糞線虫症,疥癬):現在,国内において,医師主
導治験が実施されている。
ネット上では話題の薬であるが芳しい結果は出ていないようです。
最新のメタ解析(10 のランダム化比較試験を対象)では,イベルメクチンによる治療は標準治療やプラセボと比較して,軽症患者における全死亡,入院期間,ウイルス消失時間を改善させなかったと報告されている.
サリルマブ
(遺伝子組み換えヒト化抗 IL-6 受容体モノクローナル抗体,効能・効果:関節リウマチ)
重症入院患者 420 人を対象にした国際共同第 3 相臨床試験では,十分な有効性が示せなかった.REMAP-CAP 試験では,サリルマブ治療(400 mg 単回投与)の標準治療に比した優位性が示されている )
サルグラモスチム
現在,国内において,企業治験が実施されています。
シクレソニド
(吸入ステロイド薬,効能・効果:気管支喘息)
一時期ワイドショーなどでも話題になったお薬ですね。
無症状・軽症患者を対象に特定臨床研究が実施され,シクレソニド投与群 41 例中 16 例,対症療法群 48 例中 9 例に肺炎の増悪を認めた[リスク比 2.08 (90%信頼区間 1.15 ~ 3.75)].このため,無症状・軽症の患者にはシクレソニドは推奨されない.
症例数が少ないですが、肺炎が増悪したのであればそれ以上研究を続けられないですよね。
ナファモスタット
(蛋白質分解酵素阻害薬,効能・効果:急性膵炎)
注射薬においては,現在,国内において,特定臨床研究が実施されている(jRCTs031200026).なお,吸入薬については開発中止となった.
ネルフィナビル
(プロテアーゼ阻害薬,効能・効果:HIV 感染症)
現在,国内において,医師主導治験が実施されています。
AT-527
(ポリメラーゼ阻害薬)
現在,国内において,企業治験が実施されています。
GSK3196165IV
(抗 GM-CSF 抗体)
現在,国内において,企業治験が実施されています。
GSK4182136(VIR-7831)
(モノクローナル抗体)
現在,企業治験が実施されています。
回復者血漿
COVID-19 に罹患し回復した人から血漿を採取し,患者にその血漿の投与を行う治療技術である.アルゼンチンで行われた高齢者や基礎疾患をもつ発症 3 日以内の軽症のハイリスク患者を対象にした RCT では,中等症への進行予防効果がみられた.米国では 2020年 8 月に緊急承認となっているが,有効性・安全性についてはまだ十分に検証されていない。
まとめ
正直これだ!という新型コロナ感染症に効く薬は見つかっていません。
いくらか重傷者を減らせたり、致死率を下げたりする効果がありそうな薬は見つかってきています。
そもそも新型コロナ感染症にかかって亡くなる人はどの様な病状で亡くなるのでしょうか?
そこが解明されつつありますので、より対処できる治療法が出てくると思います。
私達一般人にできることは、感染しないように自衛し、また月並みですが免疫力を上げる生活をすることです。
中等症Ⅱ以上になると回復するのが大変ですが、そこに至らないようにすることが大切です。
希望となるのが、新型コロナに感染してもほとんどの人が無症状もしくは軽症や中等症初期で回復できるということです。
そこの違いは免疫力と体力だと考えられます。
規則正しい生活とよく食べ・よく眠り・よく休めることが大切です。
過度に恐れずに対処し、より良い治療法が見つかるのを待ちましょう。
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