大阪府の吉村知事が会見で
「新型コロナウイルス感染者がポビドンヨード入りうがい薬を使用したところ、唾液からウイルスが検出される人が減った」
と言う発表があり、薬局からイソジンが消える事態となっています。
重症化を防ぐかもしれないと言っていますが、皆さん早合点の勘違いの可能性がありますよ!
ポピドンヨードは殺菌力が強い!
イソジンの独特のあの色はポピドンヨードと言う成分の色です。
ポピドンヨードはもともと殺菌力た強く、「ヨードチンキ」と言って軽い切り傷などの怪我に塗ったりしますよね?
病院でも軽い切開の時などに皮膚表面の殺菌消毒の為に使ったりしますし、献血をやったことがある方は分かると思いますが、針を刺す前に茶色い液体のついた脱脂綿で針をさすところ周辺を拭くと思います。あれがポピドンヨードを含む液体ですね!
傷口から細菌やウイルスなどが感染しない様に、ポピドンヨードで消毒するのです。
ですから、当然のことながらポピドンヨードにとって新型コロナウイルスは目じゃないんですよ!
余裕で勝てちゃいますから!
今回の発表の勘違い?
吉村知事の発表の後、皆さんが薬局でイソジンを買い漁ったようですが、正直思いっきり勘違いですよ?
イソジンなどのうがい薬はのどの粘膜表面の消毒は出来ます。
ですが細胞内に入り込んだ細菌やウイルスを消毒・殺菌することは出来ません。
今回の発表も要約すると、
「唾液中に含まられるウイルスを減らすことができる。」
と言うものでした。
それは唾液は細胞外にあるものですから、ポピドンヨードが当たれば殺菌消毒は出来ます。
当然のことながら、口中の細菌もウイルスもまとめて殺菌消毒されますので、ウイルスの量は劇的に減りますよね!
会見で示されたデータも「唾液中のウイルス量」のデータでした。
新型コロナウイルスの感染者に殺ウイルス効果のあるうがい薬でうがいをしてもらったところ、唾液(だえき)の検査で陽性となる割合が減ったとの研究結果を発表した。府などは肺炎などの重症化の予防につながる可能性があるとして、本格的な研究を始める。
「うがい薬で唾液中のコロナウイルス減少」吉村知事会見:朝日新聞デジタル大阪府と大阪市、府立病院機構大阪はびきの医療センター(大阪府羽曳野市)は4日、新型コロナウイルスの感染者に殺ウイルス効果のあるうがい薬でうがいをしてもらったところ、唾液(だえき)の検査で陽性となる割…
シャーレに新型コロナウイルスを塗って、ポピドンヨードをかけたらウイルスが死んだということと同じことです。
これは新型コロナウイルスの感染者が唾液中に多くウイルスが含まれるということに対する、ウイルスが含まれる唾液を外に飛ばすことを防げる可能性があるということであり、体内に居るウイルスを減らす効果につながるかは不明です。
個人的には体内に居るウイルスは減らないと考えています。
何故かと言いますと、体内で十分に増えたウイルスのあふれた分が唾液中に分泌されているのであり、唾液中のウイルスが減ったからと言って体内のウイルスには影響がないと考えるからです。
これは、ウイルスを多く含む水をコップに注いでいき、コップからあふれた分が唾液になります。
そのあふれてこぼれた水をいくら殺菌消毒しようとも、コップの中のウイルスには何の影響もないことで分かるとおもいます。
みなさんの勘違いはココです!
いくら口の中のウイルスを減らしても感染を防げないのです!
感染者がウイルスが含まれる唾液を殺菌消毒して周りにウイルスの含む唾液が飛ばなくなるという効果でしかありません!
風邪予防にイソジンは効果なし?
風邪予防に何でうがいしたら効果があるかを調べた研究がありました。
その結果イソジンでのうがいはあまり向かないことが分かっています。
『風邪を予防するために、どんなうがいをすればいいか』というテーマの研究です。
その研究には、健康な大人387人が参加しました。
そして、1)水でうがいをするグループ、2)ポビドンヨードでうがいをするグループ、3)特にケアをしないグループ(対照群)にランダムにわかれ、その後60日間でどれくらい風邪をひくリスクが変わるかというテーマで検討されました。
すると、水のみでうがいをすると、うがいをしないグループよりも風邪にかかる確率が下がったものの、ポビドンヨードでうがいをするグループは効果が認められなかったのです(※1)。
(※1)American journal of preventive medicine 2005; 29:302-7.
ポビドンヨードは確かに、細菌やウイルスをつよく叩く効果があります。しかし、水のみのうがいのほうがポビドンヨードのうがいよりも有効だったということになったのです。
なぜでしょうか?
ポビドンヨードは強力な殺菌性ゆえに、のどや口の中にもともといる『正常な細菌』をも叩いてしまい、さらには粘膜なども痛めてしまうからと考えられています。強すぎるゆえに『総合的には効果が相殺されてしまう』のですね。
また、一般的に、ポビドンヨードのうがい薬の安全性は高いと考えられますが、長期使用に関しては甲状腺機能を障害する可能性が指摘されています。
そのため、長期に使い続ける場合は定期的な検査が推奨されます(※2)。
(※2)Sato K, et al. Internal Medicine 2007; 46:391-5.
https://news.yahoo.co.jp/byline/horimukaikenta/20200804-00191721/
有名な研究結果であり、今回の発表でもすぐにこの研究に言及する方が多いです。
ポピドンヨードは殺菌力が強すぎて、通常のどの粘膜に居る常在菌まで殺菌してしまいます。
菌類は陣取り合戦をしているようなもので、生まれてからしばらくすると粘膜に居る菌類は決まってしまいます。
そこに外来からの菌類が入り込んでも陣地が空いていない為にある一定で追い出されてしまいます。
これが一つの感染症を防ぐ防波堤にもなっています。
ところがポピドンヨードの様な強力な殺菌剤で常在菌まで殺菌してしまいますと、陣地に空きができてしまい、外来の菌が付着しやすくなってしまうというのです。
ですから感染を防ぐよりも却って感染しやすい土壌を作ってしまうのではないかと考えられています。
今回の発表では、1日に4回のうがいを推奨していましたが、正直多すぎると思います。
新型コロナだけじゃなく、他の感染性の菌も口内およびのど粘膜に付着しやすくなるため思いもよらない口腔トラブルを引き起こす可能性を秘めています。
また、粘膜に付着したウイルスは数十分で細胞内に入り込んでしまいます。
細胞内に入り込んだウイルスはうがいでは排出できません!
このことから、今回の新型コロナ対策でも「うがい」は対策方法に入っていないわけです。
正直その細胞内に入り込む前にうがいで排出するためには10~20分おきにうがいをする必要があり、現実的ではないからです。
むしろそれよりも、風邪対策やインフルエンザ対策では、お茶に含まれるカテキンがウイルスの不活化に効果がある可能性が高いということより、10~20分おき程度で緑茶を口に含む程度で呑むことの方が予防に役立つとも言われています。
残念ながら、カテキンが新型コロナウイルスに効果があるかはわかっておりませんが・・・。
新型コロナウイルスに関しては、【目・鼻・口】の粘膜にウイルスが付着することにより感染することが分かっています。
ですので、首から上に触れない様にして、手洗いを徹底することの方が予防に役立つと考えられます。
口の中の殺菌に関しては、歯を磨くことで代用できると考えられます。
歯磨き粉の方が殺菌力は弱いですが、粘膜を刺激したり傷つけたりすることが少ないですし、必要以上に常在菌を殺菌することは無いですので、安全性が高いと考えられます。
今後の研究により変わるかもしれませんが、現在のところポピドンヨードを含むうがい薬でのうがいはあまりお勧めできないと考えられますよ。
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