日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスに感染したことによって発症する重篤な感染症です。日本だけでなく、東南アジアの国々でも流行することがあります。日本国内では予防接種の普及により患者数は減少しましたが、発症した場合の死亡率や後遺症の発生率は高く、予防が重要です。
70代男性が日本脳炎発症
今年初めて確認されたのが熊本県の70代男性患者です。
熊本県は、玉名郡に住む70代の男性の日本脳炎への感染が確認されたと発表。今年に入っての感染者確認は全国で初めてです。 熊本県によりますと、玉名郡の男性は9月4日に発熱し有明保健所管内の医療機関に入院しましたが、2日後に意識不明の重体になったということです。 その後、血液検査から日本脳炎に感染していることが分かりました。
感染経路
日本脳炎ウイルスは、主にコガタアカイエカなどの蚊を媒体として感染します。
ヒトからヒトへの感染はありません。
日本脳炎ウイルスに感染したブタを刺した蚊に刺されることで、ヒトは日本脳炎ウイルスに感染します。
コガタアカイエカはブタを好むため、ブタが多くいる養豚場がある地域や、蚊が多く生息する水田がある地域では感染リスクが高まります。
症状
日本脳炎を発症した場合、感染から6~16日間の潜伏期間を経て、38度以上の高熱や頭痛、めまい、吐き気、嘔吐といった全身性の症状が現れます。
その後、意識障害や麻痺、痙攣といった神経系の症状が現れます。子供は特に重篤な症状になりやすく、腹痛や下痢を伴うこともあります。
発熱・頭痛・吐き気・腹痛という症状だけですと酷い風邪という症状に似ています。
特にコロナウイルス感染症が流行っていますので、その場合も高熱が出ることがありますので判断が難しいですね。
意識障害やめまい麻痺・痙攣となると風邪ではおこらない症状ですので判断がつきやすくなりますが、その症状が出たときには時間との戦いになりそうです。
一般に、日本脳炎ウイルスに感染した場合、およそ1000人に1人が日本脳炎を発症し、発症した方の20~40%が亡くなってしまうといわれています。また、生存者の45~70%に精神障害などの後遺症が残ってしまうといわれています。
治療方法
日本脳炎に対する特効薬はありません。
そのため、それぞれの症状に応じた対症治療が中心となります。
特に高熱と痙攣への対処が大切です。ステロイドを使うことで症状が改善することがあるという報告もありますが、確立された治療法ではありません。
一度発症するとかなりの割合で後遺症が残ってしまうため、予防接種を受けることが最善の対策です。
日本脳炎の予防接種
日本脳炎の予防接種は、日本脳炎ウイルスに対する免疫をつけることで感染を防ぐ効果があります。
日本では、3歳から4歳までの子どもに対して定期接種が推奨されています。
また、日本脳炎流行地域への渡航者や、感染リスクの高い職業に従事する人などにも任意接種が勧められています。
予防接種は2回接種が基本で、1回目と2回目の間隔は1週間以上28日以内とされています。追加接種は2回目から1年以内に行うことが望ましいです。
- 1期接種:初回接種については3歳~4歳の期間に6~28日までの間隔をおいて2回、追加接種については2回目の接種を行ってから概ね1年を経過した時期に1回の接種を行います。
- 2期接種:9歳~10歳までの期間に1回の接種を行います。
日本脳炎の予防接種は一般的に安全で有効ですが、まれに副反応や重篤なアレルギー反応が起こることがあります。予防接種を受ける前には、医師や看護師に相談し、自身の健康状態や既往歴などを伝えることが重要です。
また、予防接種を受けた後は、発熱や発赤などの異常がないか注意して観察し、必要に応じて医療機関を受診してください。
また昭和30年以降には日本脳炎ワクチンの接種が始まりましたが、一時期停止されていました。このワクチンによって重篤な病気になった人が極稀にですがいたことがわかったからです。
現在では新しいワクチンが開発され、この重篤な副作用は改善されましたので子供の予防接種は再開されています。
しかし、子供のときに予防接種をしていても大人になると抗体が無くなっていることもしばしばあります。
特に東南アジアに行かれる方や養豚場などが身近な方は大人になってからの日本脳炎ワクチンの追加接種も検討するのが良いと思います。
かかりつけ医などに相談すると良いですね。
02別添:日本脳炎ワクチン接種に関するQ&A[H28.3月版] (mhlw.go.jp)
大人になってからの予防接種について (niid.go.jp)
日本脳炎のワクチンが今必要なわけ | 実践!感染症講義 -命を救う5分の知識- | 谷口恭 | 毎日新聞「医療プレミア」 (mainichi.jp)
参考文献
– 日本脳炎 – 基礎知識([MEDLEY])
– 日本脳炎ってどんな[看護roo!]
– 日本脳[All About]
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