「血圧が高いと言われたので歩きたい。でも、どのくらいならよいのか分からない」。ウォーキングは高血圧の生活習慣改善に使われる有酸素運動ですが、誰でも同じ速さ・時間で始めてよいわけではありません。
先に確認したいのは、血圧の状態、心臓や脳・腎臓などの病気、当日の体調、服薬です。運動は、必要な食事療法や薬物治療と組み合わせて行います。歩いた直後の血圧だけで効果を判定したり、薬をやめたりするものではありません。
2026年10月28日更新:厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023等に基づき、開始前の確認、時間・強度、中止の目安を整理しました。
- 高血圧がある方は、運動を増やす前に、できる内容と強度を主治医に確認します。
- 安静時の家庭血圧が上160または下100mmHg以上なら、速歩などを自己判断で始めず、まず血圧管理を相談します。
- 胸痛、強い息切れ、めまいなどがあれば中止。突然の激しい頭痛や片側の麻痺などは119番です。
- 許可された範囲で短時間から始め、慣れに合わせて増やします。息を止める力みは避けます。
高血圧で歩く前に、血圧と持病を確認する
高血圧には自覚症状がないこともあります。「頭痛がないから運動できる」とは判断できません。また、日本の診察室血圧の診断の目安は上140または下90mmHg以上で、家庭血圧では上135または下85mmHg以上です。診断の目安と、治療で目指す値、運動を控える目安は別のものです。
治療中の方、運動習慣のない方、心血管疾患や腎臓病がある方、運動で関節痛が悪化する方などは、現在の状態と運動の内容を主治医に相談してください。「速歩を始めたい」「何分くらいからよいか」「血圧がいくつなら休むか」と具体的に聞くと、計画に反映できます。
| 確認すること | 受診時に伝える例 |
|---|---|
| 血圧と測定条件 | 朝晩の家庭血圧、いつから高いか、いつ測ったか |
| 病気・症状 | 胸の痛み、息切れ、脳卒中や心臓病の既往、足腰の痛み |
| 薬 | お薬手帳、ふらつきや立ちくらみ、心拍数に影響する薬の有無 |
| 現在の活動量 | 普段歩く時間、座る時間、最近運動していない期間 |
| 始めたい内容 | 平地での散歩・速歩、室内運動、通勤や買い物の歩行 |
高い血圧を「歩けば下がる」と考えて出発しない
厚生労働省のガイドでは、高血圧の方の注意として、診察室血圧180/110mmHg以上、家庭血圧160/100mmHg以上の場合は、まず血圧をコントロールすると示しています。上か下のどちらかが該当する場合も、速歩や筋トレを自己判断で始めないでください。
また、当日の安静時血圧が上180または下110mmHg以上なら、運動は控えます。落ち着いて測り直しても高い場合は、その日のうちに医療機関へ連絡し、対応を確認してください。この数値未満でも安全が保証されるわけではなく、主治医の中止基準や体調を優先します。
参照:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」23・28ページ、運動を安全に行うためのポイント。
血圧の数字の意味を整理したい方は、高血圧の診断基準と降圧目標の違いも参考にしてください。

ウォーキングはどのくらい?時間と強度は段階的に増やす

運動を行えると確認できた方では、ウォーキングなどの有酸素運動を定期的に行うことが、血圧管理に役立ちます。ただし、研究で得られた平均の降圧効果を、一人ひとりにそのまま約束することはできません。
厚生労働省の慢性疾患向け情報では、状態が落ち着いている方について、1日30分以上の「楽である〜ややきつい」程度の余暇身体活動を勧め、高血圧ではなるべく毎日、普段の日常生活レベルから始める考え方を示しています。いきなり30分を達成する必要はありません。
最初は短い距離と、平らな道から
運動習慣がない方なら、医師に確認した範囲で5〜10分程度の短い歩行から試し、疲れや症状を見ながら延ばす方法があります。この時間は始め方の例で、全員に適した処方ではありません。坂道や階段、大きな荷物を持った歩行は、平地の散歩と負荷が違います。
強度は、会話ができる程度を一つの手がかりにします。息が切れて話しづらいなら負荷を下げてください。薬によっては心拍数が上がりにくいことがあるため、ネット上の「目標心拍数」に合わせて無理に速度を上げません。
分けて歩いてもよいが、「必ず優れる」わけではない
まとまった時間を作れなければ、朝・昼・夕などに分けて取り組む方法もあります。例えば10分を数回といった組み方を、体調と生活に合わせて相談します。分割すれば連続歩行より必ず血圧が下がる、という意味ではありません。
成人向けの「1日約8,000歩」などは、仕事や家事を含む身体活動全体の目安です。高血圧の人全員に追加で8,000歩の速歩を課す数字ではありません。年齢だけでなく、体力・合併症・活動量で調整します。
ゆっくり始めて、ゆっくり終える
最初はゆっくり歩いて体を慣らし、終わりも徐々に速度を落とします。ある程度の強度で運動した後は、5〜10分ほどの整理運動が示されています。運動の最後に急に立ち止まると、血圧低下やふらつきなどが起こることがあります。
ただし、胸痛や強いめまいなどの異変があるときは、整理運動を完了させようとせず、その場で運動を中止して助けを求めます。
参照:厚生労働省「慢性疾患を有する人の身体活動のポイント」、運動を安全に行うためのポイント。
運動を休む日・途中でやめる症状を決めておく
続けることは大切ですが、体調が悪い日に目標を消化する必要はありません。発熱、強い疲労、睡眠不足での体調不良、足腰の痛み、暑さ・寒さなどを確認します。猛暑の日や寒い早朝は、屋内や適した時間帯に変える選択肢もあります。
- 運動中に中止する変化:胸痛、動悸、めまい・ふらつき、冷や汗、いつもと違う強い疲れ、関節や筋肉の強い痛みなど。
- 119番を要請したい症状:突然の激しい頭痛、急な呼吸困難、胸の締め付けるような痛みが続く、片側の手足に力が入らない、ろれつが回らないなど。
- 次回の負荷を見直す手がかり:翌日の日常生活に支障が出るほど疲れが残る、痛みが続くなど。
症状が出たときは「歩けばよくなる」「いつもの高血圧だろう」と決めず、状態に応じて医療機関へ相談してください。歩いて帰ることを優先しないでください。
汗をかく日は水分補給も必要ですが、心臓や腎臓の病気で水分制限がある方は、その指示を優先します。スポーツ飲料や塩を毎回必ず補給するというルールにはしません。
参照:厚生労働省の運動時の注意、厚生労働省「こんな時は迷わず119へ」。
室内の足踏み・椅子の立ち座りは、呼吸と負荷に注意

天候や育児の都合で外へ出にくい日は、室内で動く方法もあります。下の例は、運動を行えると確認した方が医療者と相談するための候補です。画像は動きのイメージで、膝の高さや姿勢をそのまま再現する必要はありません。
| 動き | 始め方の例 | 注意 |
|---|---|---|
| その場の足踏み | 安定した場所で、足を小さく交互に動かす | 高く上げる必要はない。ふらつく方は支えと見守りを確認 |
| 椅子の立ち座り | 動かない椅子を使い、無理のない範囲でゆっくり動く | 転倒・膝腰の痛みに注意。回数や補助の要否は個別に相談 |
| 壁に手をつく軽い腕の運動 | 医療者に姿勢を教わり、浅い動きから試す | 床や椅子に無理な体重をかけない。肩や手首が痛むなら行わない |
| 軽いストレッチ | 反動を付けず、痛くない範囲で伸ばす | 息を止めない。柔軟運動だけで有酸素運動と同じ効果を約束しない |
筋力トレーニングは、一般には週2〜3日などが勧められますが、高血圧や合併症の状態に応じた調整が必要です。重い物を持ち上げる、限界まで力む、息を止めるといった方法は避けてください。呼吸を続ければ、どんな負荷でも安全になるわけではありません。
回数・セット数は、全員共通のノルマにしないでください。力を入れるときに息を吐き、余裕を残せる負荷を確認します。ヨガや深呼吸も、逆立ち・息止め・強いひねりなどを自己流で加えないでください。
参照:厚生労働省「筋力トレーニングについて」、身体活動・運動ガイド2023。
血圧と歩いた内容を記録し、食事・薬と一緒に見直す
記録するなら、「歩いた時間」「おおよその強度」「症状・疲れ」「家庭血圧」を分けて残します。歩数だけで達成・不達成を決めず、続けられた時間と体調を診察で共有してください。
家庭血圧は、運動直後の値と朝晩の安静時の値を混同しません。朝は起床後1時間以内・排尿後・朝食と服薬前、晩は就寝前など、条件をそろえて測ります。主治医の指示があればそちらを優先し、低い値だけ選ばず記録します。
子育てや仕事で忙しい方なら、「買い物で少し歩く」「家事の合間に座りっぱなしを中断する」など、実行できる場面から考えられます。安全に増やせる量を確認し、休んだ分を週末にまとめて取り返そうとしないこと。食事や睡眠を削って運動時間を作る必要はありません。
血圧が改善しても、薬を減らすかどうかは医師と相談します。減塩も並行する方は、高血圧の塩分目標と、食品表示の読み方も確認してください。

家庭血圧の記録は仙台市の測定条件と服薬の注意を参照しています。
ウォーキングについてよくある疑問
毎日30分歩けなければ意味がありませんか?
いいえ。今より少しでも活動量を増やす考え方が基本です。状態が安定し運動できる方でも、現在の活動量や体力に合わせて短時間から始めます。できない日の埋め合わせで急に強度を上げないでください。
歩けば高血圧が治って、薬をやめられますか?
その保証はありません。生活習慣を整えても薬が必要な方はいます。家庭血圧と体調の経過を確認し、治療方針を医師と相談します。
朝と夜、どちらに歩くのがよいですか?
この記事では、どちらか一方を全員に最適とはしていません。血圧の状態、服薬、暑さ・寒さ、安全な道、続けやすさで選びます。起床直後の寒い屋外など、負担が大きい条件を避け、主治医に確認してください。
参考リンク
確認日:2026年10月28日。一般情報を記事用に整理しており、個別の運動処方ではありません。
- 厚生労働省|健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(PDF)
- 厚生労働省|慢性疾患を有する人の身体活動のポイント
- 厚生労働省|身体活動・運動を安全に行うためのポイント
- 厚生労働省|筋力トレーニングについて
- 日本高血圧学会|血圧に関する大切なお知らせ(診断の目安)
- 仙台市|家庭血圧を測りましょう
- 厚生労働省|こんな時は迷わず119へ
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